「MBSEって最近よく聞くけど、実際に何するの?」
「とりあえずSysMLで図を描けばいいのかな?」
そんな風に感じたこと、ありませんか?
MBSEという言葉は広まりつつありますが、“何のためにやるのか”が曖昧なまま導入されてしまうケースも少なくありません。
本記事では、そうした「目的が見えないMBSE」から脱却するための考え方について紹介します。
MBSE、なんとなく始めようとしていませんか?
“なんとなく始める”MBSEが失敗しやすい理由と、まず考えたいこと
MBSEを始めてみたものの「思ったより効果が見えなかった」と聞いたことはありませんか?
その背景の一つとして、「時間をかけてモデルを作ったけど誰にも使われなかった」といったケースがあります。
MBSEを導入する効果として次のことをよく聞くと思います。
- トレーサビリティ(追跡するための繋がり)が向上して不具合が減る
- 差分開発(派生製品の開発)が効率化する
こうした効果を期待して、既存の設計情報を一気にモデル化しようとすることもあるでしょう。
しかし実際には、構成要素が膨大で手が回らず、どこまでやればよいかも曖昧なまま。
その結果、
「たくさん作業したのに、効果がよくわからない…」
という結末を迎えてしまうケースも少なくありません。
こうした失敗の共通点は、「誰のために、どんな場面で、どう使うのか」が決まっていなかったことがあります。
MBSEはあくまで”手段”です。
本来は、「開発のどんな課題を解決するか」を起点に使われるべきものです。
ところが、「MBSEをやる=モデルを作ること」だと思い込み、ツールを導入することや図を描くこと自体が”目的”になってしまうと、そのモデルが”使われる”ことはほとんどありません。
では、失敗を回避するには、何から始めればいいのでしょうか?
次はそのヒントを紹介します。
「MBSE、何のためにやるか」から始めてみませんか?
そのひとつの問いかけが、MBSEを現場に定着させるための第一歩
「モデルを作ったけど、誰も使わなかった」
この背景には「何のためにモデルを作ったのか」という目的の不明確さがあります。
このパートでは、その“目的”をどう見つけていくかについて整理します。
目的が明確だと、必要な情報が自然に絞られる
例えば、「この会議でこう使いたい」と目的を明確にすることで、どんな情報が必要か自然と見えてきます。
例:
- 設計レビューで「設計結果が要求を満たせているか」を説明したい
→必要な情報:要求と設計要素(機能・構造)との関係 - フェールセーフの確認会議で、「障害時のふるまい」を確認したい
→必要な情報:状態遷移と遷移条件、状態ごとのふるまい - 設計レビューで「機能の役割分担を確認したい
→必要な情報:機能とブロックの割り当て、機能間の情報の流れ
このように目的があるだけで、必要な情報の粒度や使い方も変わってきます。
目的が曖昧なまま進めると起きやすい問題
一方、MBSEを導入するときに「目的が曖昧なまま」進めると次のような問題が現場で起きやすくなります。
例:
- モデル化したけど誰も見ていない
- 「これ何に使うの?」と後から言われる
- モデルの活用方法を後から検討した結果、情報やトレーサビリティが足りず、作り直しになる
このようにモデルを作ることが目的化し、結局”誰も使わないモデル”になることが少なくありません。
目的を考えるときのヒント
「目的を明確にしよう」といわれても、どう考えればいいかわからない
そんな方は、まず次の3つを考えてみてください
- 今の自分たちの課題は何かを明確にする
- その課題の解決方法としてMBSEは適切かを検討する
- このモデルをどこで・誰が・どのように使うのか?をイメージしてみる
MBSEは、“目的を達成するための手段”です。
まずは「モデルをどのように使うか」ではなく「どの課題をMBSEで解決したいか」を考えることが、MBSEを現場に定着させるための重要な第一歩となります。
MBSEを導入したいあなたへ「ゴールは”全部”でも、始め方は”小さく」
まず”やりたいこと”に絞って始めれば、MBSEは現場に根付いていきます
MBSEを導入する際、最終的にすべての設計情報をモデル化することを目指すこと自体は、間違っていません。
しかし、「全部やる」ことをいきなりゴールにしてしまうと、次のような失敗につながる可能性も高まります。
- 製品全体をモデル化し、要素を全部つなげた結果、情報を取り出しづらいモデルになってしまった
- 細かな情報を入れすぎた結果、不要な情報が多く、複雑なモデルになってしまった
- モデルを活用する際の現場の負担が大きく、MBSE導入が途中で挫折してしまった
こうした失敗は、目的を見失い”全部やる”を手段のように扱ってしまったことに起因する場合が少なくありません。
まずは”やりたいこと”からスコープを決める
例えば
- 設計レビューで使いたい
→「レビュー対象の範囲だけをモデル化」 - 障害発生時のふるまいを確認したい
→「障害系の状態遷移図に絞る」
このようにまずは小さくはじめ、徐々に活用範囲を広げるのがポイントです。
小さく始めるメリット
- 現場がすぐにMBSEの効果を体感でき、定着しやすくなる
- 負担が小さいため、継続的に改善につなげやすくなる
- 課題解決につながり、「導入してよかった」と実感できる
このように「目的に合わせて絞り込み、小さく成功体験を積むこと」が、MBSE導入を現場で成功させるための現実的な進め方です。
「MBSE、何のためにやるの?」から始めてみませんか?
その一つの問いかけが、MBSEを現場に定着させるための第一歩
これまでお伝えした通り、MBSEはあくまで手段です。「MBSEを導入すること」自体が目的にならないように注意が必要しましょう。本当に大切なのは、「MBSEで何を解決したいか」を明確にすることです。
MBSEが目的になってしまったとき、現場では次のようなことが起こります
- モデル化が義務化され、モデルを作ること自体がゴールになってしまう
- MBSEを導入しても、現場の課題が何も変わらない
- 結果的に「MBSEは役に立たない」と現場で敬遠されるようになる
MBSE導入を成功に導くための3つの考え方
- まずは「何を解決したいのか?」をはっきりさせる
→目的が明確になれば、必要な情報が自然と見えてきます - 「全部やる」ではなく、「やりたいこと」に絞る
→”小さく始める”なら失敗しにくい - モデルは”作ること”ではなく”使うこと“から考える
→誰が・どこで・何のために使うのか?が決まってから着手する
導入ステップ例
- 現場の課題をリスト化し、MBSEが有効か判断する
- MBSEで解決したい課題を特定し、スコープを設定する
- 小さく始めて、現場で効果が実感できるようにする
- 効果を確認しながら、少しずつ広げていく
最後に
MBSE導入の目的は「モデルを作ること」ではありません。
「MBSEで何を解決したいのか?」という本質的な問いを常に忘れないことが導入を成功に導く一番の近道です。
まずは、「何のためにやるの?」から始めてみましょう。
「モデルを作ること」自体をゴールにしないために、【まずは現場の課題を一緒に棚卸ししてみませんか?】
MBSEの導入や活用で悩まれた際は、どうぞお気軽に弊社へご相談ください。
現場に即した形で、私たちが一緒に解決のヒントを考えます。