~理論で終わらせない 実務で使うMBSE~

MBSE入門

初心者~中級者向け

近年、CASEやMaaSなどの広範囲で複雑なシステムに対応する開発手法として、MBSE(モデルベースシステムズエンジニアリング)が注目を集め、MBSEについてPoC(概念実証)を行ったり、個人で調査やSysMLを勉強されたりする方が増えてまいりました。 

本記事では、初学者向けにMBSEを実施する場合の基本的な考え方についてお伝えしたいと思います。 

まずはSysMLを理解すべきか?

MBSEを学ぶにはまずはSysMLを理解しないといけない、という話をよく聞きます。SysMLは従来のソフト中心のモデル記述言語UMLを拡張し、マルチドメイン(ソフト、メカ、エレキ)に対応するシステム開発に特化した言語であるため、MBSEといえばSysMLと言われ始めたと推測されます。しかし、それではSysMLで書いたモデルをどう使うのか?という疑問を解消できません。それどころかSysMLを使うメリットが見いだせず、結局MBSEの敷居が高くなるように感じるでしょう。そのため、MBSEによって何がもたらされ(嬉しさ)、それをどう取り入れるか(方法)をまずは理解すべきでしょう。 

MBSEによって何がもたらされるか? 

MBSEのベースの考え方である「システムズエンジニアリング」の観点でみたとき、次の3点がもたらされるものと言われています。 

    〇 顧客の欲しいものを明確にしてくれる 
    〇 エンジニアに成果物をつくる手順を示してくれる 
    〇 コストと納期と品質のバランスをとってくれる 

この3点はシステム開発にとって当たり前な事でもありますが、冒頭に示すように複雑で大規模なシステム、さらに複数のシステム間を跨いで開発をしなければならない時に、特に大きなメリットと感じることができるでしょう。 

加えて、継続的に既存の成果物を再利用して開発を進める場合に、例えば過去の設計資産・テスト資産・実装物をどう再利用できるのか、いわゆるデジタルスレッド※として成立させるための方法およびIT環境も必要になります。 

※デジタルスレッド・・・直訳すると「デジタルの糸」を意味し、デジタルデータが追跡可能な形で糸のようにつながっている状態(Wikipedia) 

このデジタルスレッドを成立させるために、モデルを使ったシステムズエンジニアリング、すなわちMBSEが大いに役立ちます。そしてそのモデルを構築するための記述言語として一般的に用いられるのがSysMLとなります。SysMLを用いると特定の設計情報、例えば要求・要件・性能指標などを一つのデジタルデータとして管理し、データ間の関係性を定義することで、デジタルスレッドを成立させることができます。 

MBSEをどう取り入れるか

MBSEのメリットを享受するには、考え方・方法論・ツール・環境(計算機リソース、データベースなど)面での準備・発展が必要になります。 

SysMLは方法論とツールに関係しておりますが、重要な点は考え方になります。その考え方の主軸がシステムズエンジニアリングとなります。ただし、これはあえて新しく、特殊な考え方ではないと申し上げておきます。長年、システム開発に取り組まれてきたエキスパートからすると「それは当然の考え方であり実践してきた」とよく言われます。実はシステムズエンジニアリングはもともと、ロケットや航空機、宇宙機など複雑で大規模なシステム開発のノウハウを体系化・整理したものになります。つまり、エキスパートの知恵が埋め込まれた考え方であるため、エキスパートにとって特に新鮮味がないのかもしれません。しかし近年、自動車、船舶などシステムが複雑・大規模化する中で重要度が増してきたと考えられます。ただし用語自体は欧州発であったため、馴染みがないように感じる点はあるかもしれませんが、じっくり考え方を聞いてみると、納得される点が多いと考えられます。じっくり全体を把握されたい場合は、下記の参考文献(1)を参考にしてみてください。またSysMLについて理解されたい場合は参考文献(2)を参考にしてみてください。 

MBSE導入ステップ

次に手順について弊社の考えるステップを示させて頂きます。

STEP-0 「手法の理解およびテーマ決め」

そもそもMBSEを必要とする組織の問題に対し、深掘りして原因や課題を浮き彫りにし、MBSEをどう活用していくべきかをテーマとして選定する必要がございます。

STEP-1 「手法構築」

いわゆるPoCによって効果や課題を把握します。STEP-0のテーマをさらに具体化し、適用対象を決め、可能であれば専任者を付けてプロジェクト化し取り組みます。

STEP-2 「パイロット適用&改善」

組織内の開発にパイロットで適用させ、改善させながら開発の精度を上げていきます。実務上の課題が多くでてきますので、関係者間でよく話し合いながら進めていく必要があります。

STEP-3 「標準化・システム化・展開・定着」

組織内の開発手法として標準化し、さらなる効率化を図っていきます。加えて規模を大きくするための人材育成の計画や組織編成、ツール、環境面の継続的な発展も視野に入れることになります。

これらは、決して簡単なことではありませんが、今後も発展する製品を継続的に開発していくための仕掛けとして重要な取り組みと考えております。しかし大きな問題として、これらの仕掛けを作り出すためのノウハウは現状では非常に少ないと言わざるを得ません。

サイバネットMBSEのソリューション

我々サイバネットMBSEは、こうしたお客様の課題に対し、これまでサポートを続けてまいりました。そこで得たノウハウを一般化し、企業様にソリューションを提供することが可能となっております。(詳しくは下記URLを参照ください)

ソリューション紹介 – サイバネットMBSE株式会社 (cybernetmbse.co.jp)

また弊社では、「設計順序の最適化」「設計成果物管理」「機能影響抽出」の課題別の動画セミナーを用意しております。興味のあるテーマがございましたら是非動画セミナーをご視聴下さい。

セミナー・イベント – サイバネットMBSE株式会社 (cybernetmbse.co.jp)

ご不明点やもっと詳しく知りたい場合はどうぞご連絡ください。

皆様が本記事をみて何かMBSEに取り組むきっかけになれば幸いです(澤田)